大気社のあゆみ

大気社の歴史

近代日本の基礎づくりを担う

19131948

「合資会社建材社」創立

当社は1913(大正2)年、ドイツ系の機械輸入商社エル・レイボルド商館を母体とし、「合資会社建材社」の名で歩み始めた。創業当初は、ドイツから輸入した建築材料の販売や据え付けなどを主に行っていたが、蒸気暖房ボイラ等設備の納入に工事の仕事を併せ行う必要が生じたため、ドイツから暖房工事の技師を招聘し、最新式の暖房技術の導入を図った。
1918年、東京・丸の内に完成した東京海上ビルは、わが国最初の近代的オフィスビルであった。当社はこの大建築に強制循環式温水暖房設備と浄化槽を納入し、建築設備業界に確固たる地位を築いた。

東京海上ビル

空調業界での拡大、自動車生産設備の工事

1930年代に入り、日本の紡績産業の伸長に伴い、精紡プロセスに不可欠な空調設備の新設が爆発的に増え始めた。こうしたなか、当社は、1933(昭和8)年の近江帆布三瓶工場の紡績工場空調を皮切りに、この分野での業績を急拡大させていった。1935年、アメリカ製の蒸気噴射式冷凍機「スチームゼット」の技術を導入、蒸気噴射式冷凍機の国産化に成功した。スチームゼットは静かで故障もなく、危険とされたアンモニアなどの冷媒を使用せず、さらにイニシャルコストとランニングコストが安いことなどが評価され、空調業界にも大きな影響を及ぼした。

錦華毛糸津工場に建設中のスチームゼット

一方で、自動車生産設備に関わる工事も手がけ始めた。1936年、日本フォード横浜工場に、ボディエナメル乾燥室用蒸気ヒーターの納入およびスプレーブース給排気ダクト設置工事を受注。また、1938年に完成した、豊田自動織機製作所(自動車部が現・トヨタ自動車の母体)が初めて建設した自動車工場(愛知県挙母町)では、トラックボディ乾燥室を受注した。

高度経済のもと、事業領域を拡大

19491972

成長産業とともに

第2次世界大戦によって、日本の製造業は壊滅的な打撃を受けたものの、1949(昭和24)年頃から紡績業を中心に復興の動きが加速した。紡績工場空調での高品質・低コスト施工に定評のあった当社は、新設工場の空調工事を受注するようになり、業績を伸長させた。1952年までに、当社は日本の10大紡績会社のうち8社から大型工事を受注、国内の紡績工場空調を席巻した。

東洋ナイロン社工場(韓国)

1955年頃から、ナイロン、ポリエステルなど、石油を原料とした合成繊維(合繊)が普及しはじめた。合繊工場では、製造工程の中できわめて精密な気流、温湿度、気圧等の制御を必要とし、従来の綿・スフ紡績よりレベルの高い空調技術が要求された。当社は、紡績空調で培った経験と最新技術の追求によって、1960年代には合繊工場空調でも高いシェアを獲得した。この時代から、当社は「産業空調の建材社(大気社)」との呼び名を得るようになった。

戦後の日本では、繊維産業に加え、カメラ、フィルム、医薬品、電子などさまざまな分野で工場建設が進んだ。そして、これらの工場では、製品不良を防ぐため、高い清浄度を維持できる空調設備が求められた。当社は、こうしたニーズに応える形で精密空調、そしてクリーンルームへと技術力を高めていった。

1960年代には高度経済成長のもと、ビルの空調設備の普及が急速に進むとともに、空調の質に対する要求も高度化していった。東京オリンピックや日本万国博覧会の開催と前後して、高層ビルや近代的なホテルなどが盛んに建設されるようになり、当社も多くのプロジェクトを手がけた。

自動車の塗装設備事業に参入

一方、1953年からは自動車の塗装設備事業に本格的に参入した。きっかけとなったのは、いすゞ自動車大森工場のスプレーブース、オーブンの工事である。モータリゼーションが日本に到来した1959年には、東洋工業(現・マツダ)から初めて自動車塗装一貫ラインの工事を受注。当社にとって、社運をかけたビッグプロジェクトであった。 1963年8月には、チリ日産社(Nissan Motor Chile Ltda.)の新設工事を受注した。これは当社の海外における塗装設備工事第1号であり、塗装設備事業における海外展開の始まりを告げるものであった。

いすゞ自動車大森工場スプレーブース

東京日産自動車販売ビル
(現・六本木ヒルズノースタワー)

東洋工業F工場の
R360クーペ塗装用オーブン

グローバルな事業展開

19731991

「大気社」に社名変更

当社は1973(昭和48)年、創立60周年を機に、「建材社」から「大気社」と社名を改め、新たなスタートを切った。折しも、日本で大気汚染などの公害問題が顕在化し始めた時代であった。大気社という社名には、「『大気』に働きかけ、かつてのきれいな空気を取り戻そうとする不断の積極的な姿勢を社会に示すことこそが必要である」という思いが込められている。

社名変更の際の新聞広告

アメリカのビッグスリーからの塗装プラントも受注

同年、第四次中東戦争が勃発。石油供給量減少を理由とした第一次オイルショック、続いて1979年にも第二次オイルショックが起こり、「省エネルギー」が産業全体における課題となった。燃費性能の優れた日本車がアメリカでも売り上げを伸ばし、日米間に貿易摩擦が発生。1980年代に入ると、摩擦を回避するため、日系自動車メーカーによるアメリカ進出が加速し始めた。こうしたなか、大気社は、ホンダアメリカ1期工事、日産アメリカから塗装ロボットを受注。1981年6月には、アメリカに現地法人を設立した。日系自動車メーカーの北米進出ラッシュに対応し、その後、アメリカのビッグスリー(ゼネラルモーターズ、フォードモーター、クライスラー)からの塗装プラントも受注した。

ホンダオブアメリカマニュファクチュアリング メアリズビル工場

中東地域でのプラントや病院の設備工事を受注

一方、国内ではオイルショック以降、大型公共投資の延期・凍結が相次ぐなど「建設冬の時代」を迎えた。しかし、その頃中東地域では豊富なオイルダラーを背景にインフラ投資が盛んとなり、当社はイラン、イラク、アラブ首長国連邦などでプラントや病院の設備工事を受注した。

ニュードバイ病院(アラブ首長国連邦)

海外拠点設立を加速

1985年プラザ合意後の急速な円高の進行によって、日本の製造業は海外への工場移転を進めた。海外シフトを進めるお客さまに歩調を合わせ、当社は、海外展開の先駆けとなったタイに続き、シンガポール、マレーシア、台湾、インドネシア、フィリピン、中国、ベトナムなどに、次々と拠点を設立していった。

タイ帝人テキスタイル

グループ総合力の拡充

19922009

海外に広がる空調設備事業

1990年代は、インターネットや携帯電話の普及によってIT技術の普及が一気に進んだ時代である。クリーンルームの設計施工で先端的な技術を持つ当社は、IT機器の核となる半導体、ハードディスク、コンデンサ等の製造工場建設に参画し、電子部品業界における評価を高めた。

この時期、国内のビル空調分野では、通信関連施設の建設、また、都市部を中心に再開発や高層ビルの建設が増加した。当社はこうしたプロジェクトを多く手がけると同時に、これまで築いてきたグローバルネットワークを生かし、海外での建設需要も積極的に取り込んだ。マレーシアのペトロナスツインタワー(1994年)や、タイのスワンナプーム空港(2002年)、シンガポールのガーデンズ・バイ・ザ・ベイ(2008年)などを受注。ランドマークとなる建物の空調設備工事にも携わった。

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ(シンガポール)

ペトロナスツインタワー(マレーシア)

コンベヤ事業にも参画

一方、自動車産業を取り巻く環境も大きく変わった。新興諸国が国際市場で存在感を増すにつれ、世界の自動車メーカーの競争は、主に中国やインドを舞台に展開される傾向が強まった。これらの地域において、当社は日系のメーカーに加え、アメリカ、韓国、欧州の主要自動車メーカー、さらに地元のメーカーからも塗装設備工事を受注し、顧客対象を広げた。
欧米の同業他社がアジアへの進出を加速させ、市場競争がますます激しさを増すなか、フルターンキー方式で受注できる技術を保有しているかどうかが受注の成否を左右するようになってきたことから、当社では、自動機器部門(ロボット、ガン・ベル)やコンベヤ部門、電気制御、塗料供給など周辺技術の強化を図った。2002(平成14)年に中国・上海にコンベヤ設計会社を、2004年には中国・天津にコンベヤ製造会社を設立し、コンベヤ事業への参画を果たした。その後の10年間でコンベヤ事業は、中国国内のみならず海外工事でも実績を持つまでに成長していく。さらに2010年には、中国・天津に新たな研究開発センターを開設した。

天津大気社(中国)

研究開発センターの塗装ロボット(中国・天津)

さらなる未来を見据え

2010現在

積極的なグローバル展開

2011(平成23)年度(2011年4月〜2012年3月)は、日本国内の市場では東日本大震災の影響で経済活動に停滞の動きがみられたものの、海外市場では引き続き新興国を中心に受注が増加した。当社グループは、強みであるグローバルネットワークを生かし、積極的な国際展開を進め、海外完成工事高比率(連結)が51.3%となった。海外完成工事高比率が50%を超えたのは、創業以来初めてのことである。

グローバル化は、そのスピードをさらに加速しつつある。世界のメーカーは、豊富な労働力や天然資源を有するカンボジアやミャンマーなど、新・新興国と呼ばれるエリアへと投資を広げている。こうした状況を受け当社は、2011年にカンボジアに、2013年にミャンマーに新たな拠点を開設した。ベトナム、シンガポール、マレーシア、インドなど周辺諸国の拠点と連携を図りながら、現地に根ざした活動の展開を目指す。

大気社カンボジアのスタッフ

大気社ミャンマー開設式の様子

海外拠点網のさらなる充実

また2014年6月、アメリカのロボットアプリケーションシステムのエンジニアリング会社であるEncore Automation LLCと業務・資本提携を結び、北米市場における、塗装システムのロボットアプリケーション事業のさらなる拡大、アフターサービス体制の拡充を図る。さらに、2019年12月には大気社ラオスを設立し東南アジア事業を拡充、2021年にはNicomac社への出資により、インド市場での事業領域の拡大を図った。

1913年の創立以来、100年余りの年月が経過し、大気社グループはおよそ5,000人の従業員を抱えるグローバル企業グループへと発展を遂げた。そして今、創業時から脈々と受け継がれてきた国際性と「顧客第一」の精神を大切にしながら、世界にはばたき、さらなる挑戦を続けている。